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うつくしい墓標
墓石にファーストネームを彫りたかった。
勝手にキリスト教式の墓を造った理由はほかにもあるが、もっとも大きいのはそれだ。
わたしも璃莉もクリスチャンではないため、受け入れてくれる墓地を探すのに苦労したし、なんだかんだとお金もかかった。それでも璃莉の名前の刻まれた墓がどうしてもほしかった。
刻む文字は、悩んだ挙げ句にLILYとした。誰が見てもガイジンの墓、という仕上がりにわたしは満足した。
璃莉が知ったら怒るかもしれない。が、まあ死人が怒ろうと知ったことじゃないし、このくらいは許されてしかるべきだ。
わたしは璃莉を見送った。
璃莉さえいれば何もいらないと思っていたきもちを捨て、
自分の望むとおりのかたちで死んでいく璃莉を見送って、
璃莉を愛するかわりに、美しい名の刻まれた墓を愛して、
そうしてこれから生きていかねばならないのだから、このくらいは許されてしかるべきだ。
A monument of my sweetie
おやすみ、いとしい人
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