夏の嘘

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 二人のくだらない会話を聞きながら、また窓の外に目をやりぼんやりしながら時間を潰していると、チャイムが鳴った。僕はスマホを取り出した。案の定、父からメールが届いていた。 『来週の日曜日、予定あるか?』  特に何もなかったが、『ある』と返した。おそらく追及などしてこないはずだ。 「彼女?」山口が訊いてきた。 「親父」 「本当に?」 「嘘ついてどうすんだよ」 「で? お父さんはなんて言ってんの? メールで」 「教える必要ないだろ。大したことじゃないよ」 「大したことじゃないなら教えてよ」 「来週の日曜、家族で飯食いに行くけど、予定空いてるか? ってさ」 「いいじゃん。行ってくれば」 「行かねえよ」
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