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「もしもし、月麦?私、告白出来なかったた…」
綾菜が小さな声で話し出す。
「そうなんですか?」
「うん、あの後も多分いい感じだったんだけど、いざ言おうとすると、言葉が詰まっちゃって。駅に着いたときに、涙目になっちゃったから走って一人で帰っちゃったんだよね。風汰くん、怒ってるかな?」
「怒ってないと思いますよ」
「そうかな…」
「今までを見てるに簡単に怒る人ではないので、大丈夫です。今日はゆっくり寝てください」
「うん…」
綾菜は電話を切り、枕に顔をぱふっと落とす。
上手くいかないなぁ…。
すると、ピロン。とスマホが鳴る。
「月麦かな?」
そう思い、画面を見るとそれは風汰からだった。
「え!?」
綾菜は心臓をバクバクさせながらメッセージを開く。
『サッカー部だったよ』
「ん?」
綾菜は首を傾げたが、すぐに思い出した。そうだ。最後にした会話が、中学時代の部活についてだったではないか。綾菜は会話に対する単なる返答で少し落ち込んだが、返信が来た事は嬉しかったので、複雑な気持ちで返信を書き出す。
『サッカー部っぽい!笑』
ダメだ、これでは話が終わってしまう。
『私は吹奏楽部だったんだ〜』
いや、これだと自分語りになってしまう。
『そうなんだ!そういえば今日はごめんね、、』
これも急すぎるし、出来れば思い出して欲しくないし…。綾菜が既読をつけたまま悩んでると
『もう家ついたの?ちゃんと帰れた?急に走り出すから体調でも悪くなったのかと思って心配した。返信は落ち着いてからでいいから。おやすみ』
綾菜は電源を落とし、スマホを心臓の近くに当てる。なんだか暑くなってきて、大して意味もないのに手で顔をパタパタとした。
そして、何度もメッセージを開いては見返し、閉じては開き、何度も読み直した。
何度読んだところで内容が変わるわけでもないのに、綾菜はそれを何回か繰り返し、毎度にこりと笑っていた。
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