綾菜の思い

2/3
前へ
/32ページ
次へ
 「もしもし、月麦?私、告白出来なかったた…」  綾菜が小さな声で話し出す。  「そうなんですか?」  「うん、あの後も多分いい感じだったんだけど、いざ言おうとすると、言葉が詰まっちゃって。駅に着いたときに、涙目になっちゃったから走って一人で帰っちゃったんだよね。風汰くん、怒ってるかな?」  「怒ってないと思いますよ」  「そうかな…」  「今までを見てるに簡単に怒る人ではないので、大丈夫です。今日はゆっくり寝てください」  「うん…」  綾菜は電話を切り、枕に顔をぱふっと落とす。  上手くいかないなぁ…。  すると、ピロン。とスマホが鳴る。  「月麦かな?」  そう思い、画面を見るとそれは風汰からだった。  「え!?」  綾菜は心臓をバクバクさせながらメッセージを開く。  『サッカー部だったよ』  「ん?」    綾菜は首を傾げたが、すぐに思い出した。そうだ。最後にした会話が、中学時代の部活についてだったではないか。綾菜は会話に対する単なる返答で少し落ち込んだが、返信が来た事は嬉しかったので、複雑な気持ちで返信を書き出す。  『サッカー部っぽい!笑』  ダメだ、これでは話が終わってしまう。  『私は吹奏楽部だったんだ〜』  いや、これだと自分語りになってしまう。  『そうなんだ!そういえば今日はごめんね、、』    これも急すぎるし、出来れば思い出して欲しくないし…。綾菜が既読をつけたまま悩んでると  『もう家ついたの?ちゃんと帰れた?急に走り出すから体調でも悪くなったのかと思って心配した。返信は落ち着いてからでいいから。おやすみ』  綾菜は電源を落とし、スマホを心臓の近くに当てる。なんだか暑くなってきて、大して意味もないのに手で顔をパタパタとした。  そして、何度もメッセージを開いては見返し、閉じては開き、何度も読み直した。  何度読んだところで内容が変わるわけでもないのに、綾菜はそれを何回か繰り返し、毎度にこりと笑っていた。    
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

4人が本棚に入れています
本棚に追加