幼馴染み side 莉子

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幼馴染み side 莉子

 良平先生と環さんのラブラブっぷりを見せつけられ、女子会が終わった。 素敵なカップル。良平先生の環さんを見つめる瞳が、ホントに素敵だ。 あんな風に、愛してもらえる環さんもまた、羨ましい…と感じてしまう。 『溺愛される関係って、いいな…。』 タクシーに、揺られながら、自宅を目指す。 自宅の近くを通ると、幼馴染みで同僚の理人の家の前を通り過ぎようとしていた。 ドライバーさんに、 「ここで、停めて下さい!」 そして、降りる。 『理人、起きてるかな?明日は、土曜日だから、大丈夫かな?』 スマホをタップし、メールする。 すぐに既読になり、玄関の扉が開く。 「女子会、楽しかったか?」 「うん。やっぱり、あの話題になったよ。志緒ちゃんの。良平先生がさ、見てたみたいで。理人から、聞いてたから、フォローしなきゃって思ってたんだけど。話題がすぐに、それて。大丈夫だったよ!」 玄関先で伝える。 「ありがとな?」 みんなには言ってないが、私と理人は、幼馴染み。 まさか、教師になって、同じ学校に勤めることになるとは思っていなかった。 近い距離感のままでは、いけないと二人で話し合い、幼馴染みの関係は、職場では封印(内緒)すること。 この職業、どんな時でも、見られていることが多い。 今では、この選択が、間違っていなかったと確信できる。 それに…、理人は、教師になるつもりはなかったから。 大学4年の時、突然、進路を変えなければいけなくなってしまった。 『外資系証券会社に内定ももらっていたのに……。』 色々と悩み、取り敢えず教職もとっていたから、教員採用試験を受けた理人。 そして、理人は、地元に帰ることを選んだ。 『あんなにビジネス英語、頑張ってたのにな……。』 「莉子、酔ってるなら、早く休んだ方がいい。送ってく。」 「ありがと。」 私の家まで、200m弱の距離だが、夜は、必ず送ってくれる。 小さい頃から、ずっと。 私にとって、親友であり、兄のような存在。(同級生だけど。) 実際に、私は2月生まれで、理人は、5月生まれ。 『そういえば、そろそろ、誕生日か……。』 そんなことを考えていると、自宅に到着した。 「理人、ありがとう。じゃあね!」 「あっ、それから瑛人(あきと)が連休に帰るって。酔い、冷ませよ?」 「うん。おやすみなさい。」 「おやすみ。」 理人が、軽く右手を挙げ、自宅に向けて歩き出す。 その後ろ姿を見送り、玄関のドアをあけ、家に入った。 明日も午前は、部活。練習試合だ。 『午後は何しようかな?』 簡単にシャワーを浴び、寝支度を整え 就寝。 土曜日、少し遅めのスタート。 部活動の指導のため、職場へ向かう。 もう数人の先生方が、準備をしている。 その中に、原先生も。 柔道着をビシっと着用して、椅子に座り、机上の整理や部活の準備をしていた。 「おはようございます!昨日は、環先生に会えて、楽しかったです。」 「また、誘ってあげて?新しいとこに、慣れるまでは、バタバタだと思うから。養護教諭は、この時期、検診等の段取りが色々、大変みたいでね。」 「はいっ!次も是非!私も楽しかったので。」 そんな会話をしていると、 「お疲れ様でーす!」とテノールの声がした。 振り向くと、大高先生。 「原先生、泉先生、おはようございます。」 と、破壊力満点のスマイルで、声をかけらる。 「職員室、離れる時は、ドアの鍵をかけてね。じゃ、私は、柔剣道場に行くよ。」 「「はーい。」」 「大高先生、鍵、持つのも忘れないで。」 念押しして、席を立つ原先生。 この一言も新人教育なんだよね。 原先生の心遣いを感じる。 原先生を見送った後、大高先生にすぐさま、話題を振られた。 「泉先生、昨日、女子会だったんですか?」 「はい。そうですよ。去年まで一緒だった、原先生の奥様の環先生と柚希先生、志緒先生と私で。」 「楽しそうですね。」 「はい!楽しかったです。ホントに。また、行きたいなと思ってますよ。じゃ、私も、第2体育館、行きますね?」 私は卓球部の副顧問。 全くの未経験者。 主担当顧問の鈴木先生と一緒に担当している。 体育館に入ると、生徒たちと一緒にストレッチをしていた鈴木先生。 今日は、10時から、ここで3校で練習試合を組んでいる。 鈴木先生の、お子さんの姿が見えた。 二人は、鈴木先生の近くで、ストレッチの真似……。 『可愛いい…。今日は、子守りかな?』 そんなことを思った矢先、 「泉先生、ゴメン!由真(ゆま)(たく)、お願いできないかなぁ?」 私は2人に、にっこり微笑んで、鈴木先生に向かって、返事をした。 由真ちゃんは、5歳。 卓ちゃんは、3歳。 どちらも色素の薄いブラウンのクルクル天然パーマの髪が、フワフワで超可愛い。 由真ちゃんが、私に、 「きょうはね、ママも、ここにくるのー。あとでっ。」 と話してくれた。 鈴木先生夫妻は、どちらも卓球部顧問。 練習会場がうちだから、鈴木先生が子どもたちを連れてきたみたい。 「由真ちゃん、卓ちゃん、何して遊ぶ?」 「「たっきゅう(ちゅう)っ!!」」 2人の元気な声がハモった。 ママの学校が到着するまでの40分間、私は、生徒の様子も気にしながら、由真ちゃん、卓ちゃんと二人で、卓球の真似ごとをして過ごした。 しばらくすると、第2体育館の玄関から、練習相手の学校、2校の生徒や保護者が。 そして、鈴木先生の奥様の姿も。 その様子を見た、由真ちゃん、卓ちゃんは、 「「ママ~。」」 と言って、走り出す。 屈んで、二人をしっかり、キャッチする奥様。 「こんにちは。お疲れさまです。由佳(ゆか)先生。」と挨拶。 由佳先生は、国語教師。 研究会なのでは、良く顔を合わせるので、親しくさせてもらっている。 「今日は、練習試合、引き受けくれて、助かりました。しかも、会場も。 うちは、体育館が一つだから、時間差でしか体育館が割り当てにならなくて。ありがとうございます!」 そう言って、卓ちゃんを抱っこした。 「良い練習試合にしましょう!」 と、声をかけた。
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