妻の誘惑術 side 良平

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妻の誘惑術 side 良平

新年度早々、同僚たち、特に新人を中心に、人間関係が、複雑に。 環に聞かせると、目を輝かせて、内容に聞き入っている始末。 兄貴分としては、ちょっとやっかいな案件だ。 『俺たちの時も、大変だったけど。』 今だに、どうして環が俺を選んでくれたのが不思議でならない。 まあ、自分達のことは、おいて置くとして…。 「良平、今日の志緒ちゃんの話。なんかない?」 「俺だって、しょっちゅうみんなを見てるわけじゃないよ。しかも、部活だけだったし。」 「でも、土曜日と言えば、吹奏楽部のOBの子達、来てたんじゃない?」 「環、ホント……。転勤しても、まだまだうちの学校事情や人間関係に興味津々だね。」 「あの山部弦くんのお兄さん(?)も、志緒ちゃん狙いだから、気になっちゃって。今までは、生徒たちが、よく教えてくれてたの!保健室で。」 「特に、生徒会の子達がね。そんな状態だったから、弦くん、よくお兄さんのことでディスられてたわね。ちょっと、気の毒だったわ。」 「保健室は、秘密、暴露大会場だったのか?」 「それができる保健室ってことよぉー。平和だったな。今は、不登校生徒の居場所になってて、たまに私の方の息がつまる時があるもの。養護教諭だから、ホントは、こんなこと言っちゃいけないんだけど…。許してね?旦那様の前だけだから。」とウィンク。 「それから…☆◯…」 でも、話しているうちに、最後の方は、シュンとしてしまった。 転勤早々、色々あるらしい。 「頑張ってるよ。環は…。」 そういって、後ろから抱え込むように抱きしめた。 顔だけ振り向き、ニコッと微笑む環。 こういう所に、俺も癒される。 『こいつの弱いところも含めて全部、守りたいし、癒したい……。』 土曜日の午後をしばらく、二人でまったりと過ごした。 夕食は、デリバリーを提案。 環は、 「良平、ありがと。大好き!」 と言い、注文したお寿司を頬張る。 「良平は、見守ってるみたいだけど、実際、あの三人をどう見てるの?」 お腹が膨れてきて、聞きたかったことを思い出したようだ。 急に、突っ込んでくる環。 「……。」 俺は、寿司に集中した。 今度は、俺の懐に入り、上目遣いに問いかけ……。 瞼をゆっくり閉じる環。 そして、ぱっと目を開き、 「教えてくれないの?」 耳元に吐息のような甘い声で囁く。 ふっくらした唇がクローズアップして……。 普段は、さばさばしているのに、こんな時のしぐさは、破壊力満点。 俺の理性は、ガタガタだ……。 すぐに、軽くkissした。それじゃ足りなくて、もっと深く唇を奪ってしまう。 ゆっくり、距離をとると……。 アーモンド型の切れ長の目にびっしりの長い睫。 アルコールのせいか、目元が潤んでいる。 ちょっと、覗き込むと見える胸の谷間……。 『ヤバイ……。』 視線をそらす俺……。 しばらくの沈黙……。 「もう、良平のケチっ!」 へそを曲げてしまった。 「もう、いいっ、莉子ちゃんに聞くからっ!」 すぐに、スマホをタップする環。 メールを送信。 すると、 “ピコン!” 直ぐに返事が。 これから、風呂に入るから、後で 電話するとの内容。 待ってる間、ワインを嗜み、時間を過ごす。 心の中で、環に 『もう、絡まないでくれ~。』 と頼んでいる自分がいた。 それから、10分もしないうちに、ダイニングのテーブルに突っ伏して、寝息をたてる環。 そして、 泉先生から、ビデオ通話がかかってくる。 「もしもし?ごめんね。うちの環、この通りになってて。」 寝ている様子を写すとクスッと微笑む泉先生。 「分かりました。また、明日にでも。原先生、ゆっくり過ごしてくださいね?」 と言い、通話終了。 環を抱えて寝室のベッドへ運ぶ。 起きる気配は、全くなかった。 『ホントは、あの雰囲気のまま、夫婦のスキンシップに……。と思っていたけど……。』 酔って絡んでくる環とのことを思い出し、1人、赤面……する俺。 『今度、飲み会にでも誘うか……。』 タイプが異なる二人のイケメンを思い浮かべた。 ホントの所、志緖先生が一番よく分からなかった。どちらかといえば、二人に対して一定の距離を保っている。 男二人は、明らかに好意をもっているだろう………。 目の前の寝顔をじっくり覗き込み、俺は、環の横に滑り込んだ。
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