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家に到着。
慣れない運転は、やはり、緊張した。
「ただいまー。」
「お帰り。どうだった?仕事先?」
と、母さんが聞いてきた。
「何か、良く分からなかった……。次に行く時までに、書き終わらないといけない書類は、もらってきたかな。」
「そう……。」
とだけ答えて、母は、食事の準備を続けた。
俺は、部屋へ入り、渡された封筒から、書類の束を確認し、記入できるものから、書き始めた。
そして、今日、出会った人たちのことを思い出す。
最後に会った中村先生って、いくつくらいかな……。
生徒2人が、両側に並んでいる姿を思い描く。
『肩から20センチ位のロングヘアーをシュシュで一本に束ねていたっけ。クセのないストレートだったよな。ネイビーのシュシュ、髪の色と合っていたなぁ。』
と知らず知らずのうちに思い返していた。
次の日は、通勤時間と同じ時間に、通勤経路を運転した。そして、自宅からの距離を計測。書類に記入するためだった。
学校に着くと、ジャージ着用のメガネをかけた若い男性の先生が、生徒と一緒にランニングをしていた。この時期で、しっかり日焼けしている。部活焼けなのだろうか……。
走りさりながら、挨拶された。
その後、生徒たちからも。
また、軽く会釈をして、車に戻る。
ランニング軍団が、一旦休憩にはいったらしい。車の中まで声が聴こえてくる。
「あれ、新しい先生かな?」
「そうじゃない?」
「どこの学年かな?」
「若い先生だね。うちの学年に。来ればいいのに……。」
『……。』
なんとなく、都合が悪くて、その場から離れた。
つい数日前まで、ただの大学生だった俺。
新任式が終われば「先生」と呼ばれることに、違和感を感じずには、いられない。
しかし、そんな仕事を選んだのは、自分自身。『仕方ないよな。』と自分に言い聞かせる。
早く「先生」と呼ばれることに慣れないと……。
数日がすぎ、初出勤日。
新任職員は、新任式のなかで、一人ひとり挨拶。
俺は、演台の前にたち、大きく深呼吸。
そして、
「おはようございます!」と挨拶して簡単な自己紹介をした。
午後からは、所属学年の2年生の生徒ととも、入学式の準備をし、2、3年生は、礼法と合唱練習。
先生方は、素早く要項を確認すると、生徒たちに的確な指示を出していく。
唖然とした。
『先生』って、仕事は、こんなこともするのか……。
『仕方ない……。分からないことは、生徒と一緒に覚えるしかない。』
と心の中で呟き、活動に入る。
数人の係生徒とともに、横看板の模造紙をはり、掲示の調整をする。
その後、パイプ椅子、長テーブルの準備と消毒……。
何とか、時間内に活動を終わらせることができ、ホッとする。
『終わった……。』
この日の最後は、職員集会…。
それぞれの担当者から、入学式準備の進捗情報を確認して、退勤らしい。
1学年の職員はこれから、クラス分け名簿を玄関に貼って業務終了。
長い1日が、終わった。明日は、入学式……、か。
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