部活後は…

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部活後は…

ほぼ午前に実施している部活動が終わる。 担当者は、一旦職員室へ戻って来て帰宅する。 貴重品を持ち、立ち上がると、そのタイミングで、佐々木先生が戻ってきた。 スポドリをゴクゴク飲みながら、座席につく。 「お疲れっ!」 「お疲れ様です!」 「大高先生、まっすぐ帰る?時間があれば、飯、行かない?」 「はい。特に何もないですが…。」 「じゃ、行く?」 思わず頷いた。 『着替え、持って来ていて良かったな…。』 「着替えますね。」 「俺もー。このまま、移動はできないかな?汗だく……。」 数分後、店の打ち合わせをし、現地集合。 5月中旬にしては、暑い日。 店内は、ほどよく冷房がきいていた。 二人でマスクを着けて、小声で会話する。 「公式戦近いから、追い込みだね!」 「そうですね。テニス部、外だから、さらに大変ですね。」 「中の部活も大変だと思うけど?バスケも空調によっては、大変でしょ?」 「感染対策のプリント類も多いし……。」等と話していたら、 それぞれの定食が届く。 因みに俺は、胡麻味噌豚焼き定食。佐々木先生は、しょうが焼き定食。 二人とも無言で食べ始める。 勿論、黙食。 食べ終わり、マスクをつける。 他愛ない話しをする。 最後に、佐々木先生が探るような眼差しを向けて問いかけた。 「なんか、気になってることとか、ある?」 「部活ですか?」 「いや?その他のことでも?」 とニコニコしながら、こちらを伺う。 『この人、なに考えてるんだろ?』 「(しばらく考えるが…。)はぁ。今は、特には……。」 「なら、いいけど(笑)。じゃ、また、月曜に……。」 「はい。失礼します!」 定食屋から、出て自宅に向かった。 家に着いた。 まっすぐ浴室へ。 シャワーを浴びる。 自室へ向かい、さっきのやりとりを思い返した。 『なんか、言いたげだったけど…。なんだったのかな……。』 ベッドに寝そべり、ダラダラしていると、メールの着信が鳴った。 メールの相手は中村先生。 “大高先生、お休みの所、すみません。来週の朝ドリルに使う、3年生のプリントのありかを教えてくれませんか?” 簡単な業務内容の問い合わせなのに、ドキッとした。 無防備な自分を見られているような感覚に陥る。 『まだ、仕事をしていたのか……。』 時間を確認すると、14時50分。 メールの返信を返す。 数分後、着信が鳴った。 “見つけました。ありがとうございました。お休みの所、すぐに対応して下さり、ありがとうございました。” とメッセージが入った。 たった二回のシンプルなメールを何度も読み返す俺。 『こんなこと、してるって、高校時代と同じだなぁ。はぁ。』 社会人にもなって、これだけのことが単純に嬉しいだなんて。 冷静に考えると、単純明快。 『好意をもっている人にしか、やらないよな?普通……。』 と納得する俺。 自分の気持ちを自覚し、この気持ちを認めるしかないと思った、土曜の午後だった。
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