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しかも職人たちは家でじっとしているわけではない。建設現場を飛び回っている。仕事中であると、電話にも出てくれないことも多い。しかもよく知らない電話番号からの着信ならなおさらだ。
夏の暑い日である。疲労もあったろう。しかしそれだけではなかった。
どうもあの写真を見るごとに体が重くなっていくようなのだ。説明のたびに見せている、根賀邸の欠陥箇所の写真。確かに気の滅入る写真ではあったが、そんなもので体調に異変が現れるわけがないと原田はあくまで気のせいだと思い込むようにしていたが……。
しかしとうとう倒れてしまい、救急車で運ばれていまは病院のベッドの上にいた。
「ということで、わたしが引き継ぐことになりました」
事務所に帰ってきた先野にそう経緯を説明したのは、三条愛美であった。
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