ピンチヒッター三条愛美

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 エスカレーターで二階に上がり、図書館へ足を踏み入れる。二階のフロアのほとんどを占める広い図書館だった。整然と並べられた書棚が奥の方まで続き、蔵書の規模が壮観である。単に書籍を貸し出すだけでなく視聴覚コーナーもあり、ヘッドホンで映像コンテンツを楽しんでいる利用者もいた。  受付で、古い地図を見たい旨を伝えると、 「それなら、こちらです」  ネームプレートを首から下げた白髪頭の男性職員に、一般の図書とは違う場所へと案内された。そこは、新聞などの大きな版の印刷物を置いているキャビネットであった。  引き出しを引いて見せて、 「こちらにコピーが入っておりますので、出して、そこの机でご覧ください」  そばの会議机を指し示した。  ありがとうございます、と三条は礼を言うと、職員はさっさと戻っていった。愛想のない男であった。
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