ピンチヒッター三条愛美

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 最近の地図からさかのぼって見ていった。  五十年前、百年前と、相当古い地図もあった。  あの土地がかつて沼地であって、そのせいで湿気が多く、カビが発生したり、土地が柔らかいために家がわずかに傾いてしまっているのだと、三条は予想した。地盤になんらかの問題があれば、本来なら手を入れてから建築が始まるはずだが、今回は、会社の業務が混乱していて、それができていなかったのではないか。  しかし、いくら年代をさかのぼっても、あの場所が沼沢であったという地図には出会わなかった。いつまでもそこは空き地のままで、家屋が建てられていないのはもちろん、畑でさえなかった。 (予想が外れたか――)  が、明治初期にまでさかのぼった地図で、それまでとは異なる記述になっていたのを見つけた。  そして三条は言葉を失う。想像していたのとは違っていた。
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