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たどり着けなかった真実
ハラショーの残したメモを手がかりに職人を当たってみたものの、なんの成果も出せないまま事務所に帰って来た先野光介に待っていたのはとんでもない知らせであった。
依頼人の根賀が自宅の火事で死んだ、というのである。
「いったいどうなってるんだ……」
さすがにショックであった。暗い表情の依頼者の顔が思い出される。その場で黙祷をささげ、死者に弔意を示した。欠陥住宅を買わされた挙句、火事で死んでしまうとは、悔いばかりが残る人生ではないか。せめてもの救いは妻と娘が別居していて助かったということだろう。
家、というのは人生最大の買い物であるがために、失敗するとその痛手は大きい。
「となると、この依頼は中止だな……」
デスクの椅子にどかりと腰を下ろし、
「まさかこんなことになるなんてな」
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