たどり着けなかった真実

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「具合はどうなの?」  三条が尋ねる。 「はい、体調はもどりました。熱中症をなめていました」 (本当に熱中症なのだろうか。医者の診断なのだから確かに熱中症なのだろう。でも熱中症になってしまったのは――)  いや、と三条は内心かぶりを振る。 (根賀さんが咳に苦しんでいたのもただの偶然だ)  そう思い込むことにした。 「今回の案件は、もう片付いたんですか……」  退院前に原田は調査中止になったと聞いていた。 「そうだよ。不幸なことに依頼者が亡くなった。だからこれ以上の調査は必要なくなったわけだ。それを片付いたと言えるかどうか、というのはあるけどな」  先野は不可抗力による契約不履行である、と言った。 「でも原因が突き止められなかったのは残念ですね。気になるところだったのに」
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