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婚約破棄?
「いいですか、ブライズ。今日の主役は貴方なんですから、いつものように壁の隅に立っていてはいけませんよ」
「はい、お母様」
それを聞いて、妹のアシェリーも言った。
「私も目立たないよう努力は致しますわ」
「アシェリー、ありがとう」
一家で、ロールズ家の舞踏会に向かう。
馬車は軽快に走っているが、私の心は重かった。なぜなら、目立たず地味に絵を描いて過ごす方が気楽だったからだ。しかし、今日はそういうわけにはいかない。それは、今日がバーナード・ロールズ様と私の婚約発表パーティーだったからだ。
「さあ、着きましたよ。ドレスを踏まないように気をつけて」
「はい、お母様」
私は最後に馬車を降りた。
ロールズ家の舞踏会は、始まろうとしていた。
「ロールズ卿、本日はよろしくお願い致します」
「パルヴィン伯、こちらこそよろしくお願い致します」
お父様達が挨拶をしていると、バーナード様が現れた。
「はじめまして、ブライズ様」
「あの、私アシュリーです。お姉様はあちらです」
バーナード様は握手しようと出した手を引っ込めてしまった。
「あなたが、ブライズ様?」
「はい、バーナード様」
あらかさまに、バーナード様はがっかりしていた。
それはそうだと、私も思っていた。金髪に碧眼、お人形のように可愛らしい妹に比べて、私は地味を絵に描いたような容姿をしていた。自覚もしている。
「婚約は解消しませんか? 私はアシュリー様に心を奪われてしまいました」
「いいですよ、アシュリーが良ければですが」
「私が!? お姉様を差し置いてそんなまねは出来ません!!」
アシュリーは首を振った。しかし目はバーナード様を見つめている。
「私がお嫌いですか?」
「いいえ、そういうわけでは」
アシュリーは顔を真っ赤にして俯いた。
バーナード様は誰の目から見ても美男子だったし、派手でアシュリーと並ぶと絵になった。
「婚約祝いに、お二人の肖像画を描かせて頂けますか?」
「お姉様……」
こうして私の婚約披露パーティーは、バーナード様とアシュリーの婚約披露パーティーとなってしまった。
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