太一

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初めてバスの中で見た時、彼女のスーツ姿、高級そうなコートと鞄。乱れのないきちっと整えられた髪。美しい目鼻立ち、すらっとしたスタイルに目を奪われた。 モデルのような女性が、なぜこんな田舎町のホテルの送迎バスに乗っているのだろうと不思議に思った。その時はジロジロ見るのも失礼だと意識しないようにしていた。 一緒に川に流された時は、必死に生きようと頑張る姿に根性あるなと感心させられた。 足首も折れていたし、泥まみれで、飲み物も食べ物もない状態なのに、あの寒さの中、文句を言わずに彼女は耐えていた。 わがままで我慢ができない、そんな感じの悪い女だったら、彼女を置いて救助を呼びに行っただろう。 俺がいなければ死んでしまうかもしれない。 あきらめてしまったら彼女は終わる。 そう思うと傍から離れることができなかった。 この儚げな女を必ず生きて帰さなければならないという使命感みたいなものが沸き上がり、意地でも二人で生き残るぞと心に決めた。 話をすると意外と、とっつきやすいというか、面白く可愛らしい一面があった。 バスルームでの、彼女のまさかの行動に度肝を抜かれたが、やたら気持ちがよかったので、拒否できるほど俺の心は健全ではなかった。 そしてあのキャンプ場で愛し合った。 体の相性もかなり良かった。性格も明るく可愛らしいと思った。見た目は言う事がない俺のタイプだ。 自分の身分に胡座をかき、相手の気持ちや考えなどはかまわずに、一方的に相手を見下したような高飛車な女だったら、ここまで魅かれはしなかっただろう。彼女はそれとは違う、最高の女だった。
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