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たなから ぼたもち号
ここは ひいらぎ町の きょうさくさんの うちです。
「トントンさーん。」
きょうさくさんの あずかる るりこ という おんなのこです。
おうど色の ながい髪と、ぐんじょう色をした おおきな瞳を もっています。
まっしろな こいぬを さがして 濡れ縁から 庭を のぞみ、いないと みるや、また べつのところへ いってしまいました。
あつい夏ですから 庭は すっかり 草ぼうぼう。
おおきなからだをした さきがけ という おにいさんが 背広のうでを まくって ザックザックと 草かりをしています。
さきがけくんは きょうさくさんの こぶんです。
庭には ふるい蔵がひとつ ずしりと ありました。
そのなかに ぎんや という きれいなかおの おにいさんがいます。
まっくろな 学生服に 学帽の 高校生。
こちらも うでまくりをして 蔵を セッセと せいりせいとん しています。
ぎんやくんは きょうさくさんの こどもです。
「あっ」
とつぜん ぎんやくんが こえを あげました。
そして 学帽の あたまに サッと 手をやります。
蔵の戸は あけっぱなしでしたから さきがけくんが きづいて、ゆっくり あるいて はいってきました。
「どうした。あたまに なんか のってるぞ。」
「そう。たなから これが おちてきた。」
ぎんやくんは そっと 両手で とりました。
それは 木でできた とても ふるそうな 独楽でした。
「へえ。おやぶんのかな?」
「ううん、おとうさんのじゃない とおもう。この家の まえの もちぬしの だろう。蔵のなかのものは ぜんぶ そうだから。」
「ふーん。なあ、たなから おちてきたんなら、こいつの なまえは ぼたもち号にしようぜ。」
「うん。ぼたもち号にしよう。」
「おっ、ひもも おちてるぞ。」
おおきなさきがけくんが しゃがんで 独楽のひもを ひろいました。
りょうはしをもって ぴんぴんと つっぱると、茶色い ほこりが 空気を ちょっと そめましたが、切れることは ないようです。
さきがけくんは にっと わらいました。
「せっかくだから この独楽で 勝負しようぜ!」
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