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しょうぶ!
ぎんやくんと さきがけくんは、うちの 正面に いどうしました。
この建物は むかし お店でしたから、玄関のかわりに ぽっかりとした広間が あるのです。
ぎんやくんが ききました。
「さきがけ。独楽は ひとつしかないのに どうやって 勝負するの。」
「ひとりずつ まわして、とまるまで 数を かぞえる。ぼたもち号が なるべく 長生きしたほうが 勝ちだ。おまえから やっていいぜ。」
「でも おれは 独楽のまわしかたが わからない。」
「なんだ、それを さきに いえよ! しょうがねぇな、おしえてやるから よくみとけ。」
さきがけくんは ぼたもち号に ひもを ぐりぐりと てぎわよく まきつけます。
ひもの はしを もったまま、かたい床に トッと なげました。
ぼたもち号は じぶんの一本足で ピンと たっています。
いいえ。
ほんとうは 目ではわからないほど、石の床を しずかに うがちそうなほど、すばやくすばやく その場で まわりつづけているのです。
ここまでを じっとみていたぎんやくんが
「ありがとう。やってみる。」
といいました。
さきがけくんが 革靴の底で ぼたもち号を とめると、「しゅうっ」ときこえ、ほんのり けむりのにおいが ただよいました。
ねつをおびた独楽を うけとり、真剣に ひもを まきつけていきます。
さきがけくんが ぎんやくんに ききました。
「おまえ、ことし いくつだっけ。」
「十八。」
「おまえは しろうとだからな。とまったときの すうじに 十八 たしてもいいことにするぜ。」
「ありがとう。負けない、やるからには。」
ぎんやくんは うなずくと、ちからいっぱい ぼたもち号を なげました!
さきがけくんのやったように 床に おりたつことはなく、ビューンと 真横に ふっとんでいきます!
「トントンさーん。」
ぼたもち号の とぶさきに、おりあしく、こいぬを さがす るりこちゃんが とおりがかりました。
さきがけくんの革靴が ぎんやくんの ほおを かすめたかとおもうと、手裏剣よりもするどく とんでいき、空中のぼたもち号に あたりました!
革靴は ボトリと おち、ぼたもち号は 方向を カキリと かえて とんでいきます。
るりこちゃんは なにも きづかず、また どこかへ あるいていきました。
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