ぼたもち号、とんでいく

1/1
前へ
/7ページ
次へ

ぼたもち号、とんでいく

 きれいな ぎんやくんと、おおきくて かたほう  はだしの さきがけくん。  ぽかんと くちを あけたまま、からだだけは きびんに はしって おいかけはじめました。  なにをって、ぼたもち(ごう)をです。  ぼたもち(ごう)は ほうき(ぼし)みたいに、いまだ (くう)を はしりつづけているのです。  ひんやりした広間(ひろま)の むこうに、ちょっとした(つくえ)が あり、金魚(きんぎょ)のおよぐ しかくい水槽(すいそう)が のっています。  あぶない! あたる! 水槽(すいそう)が われちゃうかも!  とおもいきや。  ぼたもち(ごう)は ここで はじめての着地(ちゃくち)を はたすのですが、なんとそれが 水槽(すいそう)の せまいせまい ふちだったものです。  まっすぐな ふちを まっすぐに はしり、ふたたび ぽーんと (くう)に とびだします。  あぶない! そのさきには ガラスをはめた()()が あります! こんどこそ われちゃうかも!  とおもいきや。  ()()は あけっぱなしで、ぼたもち(ごう)は なんなく へやのなかへと すいこまれていきました。  かんぱついれず、ぎんやくんと さきがけくんも (くつ)をぬぎちらかし、どやどや あがりこみます。  ここからは 居間(いま)でした。  くろい着物(きもの)の きょうさくさんが、さして おもしろくもなさそうに 新聞(しんぶん)を よんでいます。  ぼたもち(ごう)は きょうさくさんの まえの 座卓(ざたく)を ぐりぐり かけまわったあと、また ぽーんと とびあがりました。  あぶない! きょうさくさんに あたります! ふたりが しこたま おこられちゃう!  ぎんやくんと さきがけくんは、きょうさくさんの 新聞紙(しんぶんし)の はしとはしを とっさに ぐっと つかみました!  ぼよよーん!  ぼたもち(ごう)は 新聞紙(しんぶんし)に はねかえされて、ひときわ おおきく とびあがりました。  天井(てんじょう)まで とぶと、(はり)に おりたち、じゅうおうむじん、ねずみみたいに はしりまわります。  いったい どうしたことなのでしょう。  もはや 勝負(しょうぶ)とか、(かず)を かぞえるとか、そういうおはなしでは なくなりました。  (はり)から おちて、台所(だいどころ)を じゅうりんし、廊下(ろうか)へと とびだしていく ぼたもち(ごう)。  ぎんやくんと さきがけくんが きらきらした()で おいかけていきます。
/7ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加