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いっしょにいこう! ぼたもち号
ぼたもち号と 亀たちのことは だれも きがついていません。
だって、庭は まだ 草が ぼうぼう。
ちいさな独楽に せのひくい亀 ときたら、あんまり よく みえないのです。
すぐそばでは ぎんやくんが きれいなよこがおを むけて たちつくしていました。
まだ ぼたもち号が るりこちゃんの へやのなかに いるとしんじて、まるで こがれるみたいに 窓を みあげています。
「トントンさーん。」
濡れ縁に るりこちゃんが でてきました。
るりこちゃんは ずっと こいぬを さがしているので、ぼたもち号のことなど ひとつも しりません。
ぎんやくんが 庭に さびしく たちつくしているのをみつけて、ただただ ぐんじょう色の瞳を びっくりさせています。
と、そんな るりこちゃんの あしのした。
濡れ縁の 板の したから、まっしろで ふわふわのいきものが はいでてきます。
あっ、こいぬの トントンです!
こんなせまいところで ひるねでも していたのでしょうか。
ちぢこまった まえあし、うしろあしを きもちよさそうに グングン のばします。
そして たんぽぽの綿毛みたいに ふわわわんと あくびをしました。
灯台元くらし。
ただでさえ ぎんやくんに きをとられている るりこちゃんには トントンが みえていないようです。
トントンは ほわほわとしたかおで 夏模様の庭を ながめました。
そして、ぼたもち号と 亀たちの みごとな三段がさねを みつけたものです。
とたんに トントンは ねむけが ぜんぶ ふっとんだようです。
なんともおいしそうな くろまめそっくりの 両の目を きらきらと ほほえませながら かけよってきます。
そして、なにか いいことを おもいついたのでしょうか。
いちばんしたの おおきいほうの 亀の おなかに ふんふんと 鼻先を さしいれたかとおもうと……。
ぽーん!
ぼたもち号と ちいさいほうの亀と おおきいほうの亀は クルンクルンと みっつの宙返り!
まっしろなトントンの ふわふわのあたまのうえに しっかりと 着地します!
うえから、
ぼたもち号、
ちいさいほうの亀、
おおきいほうの亀、
こいぬのトントン
の、じゅんばん。
いちばんうえの ぼたもち号、うれしそうに たのしそうに くるくる まわっています。
いちばんしたの トントンも うれしそうに たのしそうに にこにこ わらっています。
「わん わん わーん!」
トントンは そういうと、みじかいあしで ぴらんぴらんと はしり、庭を とびだしていきました!
もちろん、ぼたもち号と 亀たちも いっしょです。
この一声で、ようやく るりこちゃんも トントンが すぐそこに いたのに きがつきました。
ですが そのときには もう、トントンは 正面の 広間さえも つっきっていくところです。
「ああっ、トントンさん!」
ねこのとらじろうが おとずれたとき、かってに おもての戸を あけてしまっていました。
そのすきまから、トントンは ぴらんぴらんと 往来へ でていきます。
さあ。
ずっと ずっと くらい蔵のなかで ひとりぼっちだった ふるい独楽。
たなからおちた ぼたもち号。うまれて はじめての おでかけです!
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