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ついに卒業式の日を迎えた。
春からは大学生になる。
みんな、それぞれの夢に向かってバラバラに旅立つんだ。
高校三年間を懐かしみ、友人と一通りの別れを告げ、私は最後にテニス部のコートへ向かった。
高校生活の中で、一番思い入れのある場所。
「村田先輩」
ふいに名前を呼ばれて振り向くと、そこには学生服の竹内くんがいた。
ジャージ姿しか見慣れていない私は、その新鮮さに図らずもドキドキする。
「ご卒業おめでとうございます」
例によって礼儀正しい挨拶をする竹内くんが、なんだか「らしいな」と思ってクスリと笑ってしまった。
「ありがとう。部活、見に行けなくてごめんね。これからも頑張ってね!」
「先輩、ちゃんと見ててくれましたよね」
「え?」
何のことかわからずキョトンとしていると、竹内くんは続けて言った。
「教室から、テニスコート見てくれてましたよね」
ハッとなって、頬に熱が集まってくるのを感じる。
確かに見ていた。
見ていたけど、竹内くんはそれを気づいていたの?
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