プロローグ

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 そうだ、俺の名前は箕島(みしま)秋斗(あきと)。  最推しオラン・イグニスのためにバイトに明け暮れる廃課金ユーザーだった。  あの日は『さいまじゅ』運営から三ヶ月後にサ終の告知が出て、現実が理解できないまま絶望感でヤケ酒をしようとしたんだ。  そしてコンビニに向かう途中でトラックに轢かれて……  それでなんで『さいまじゅ』の世界で目覚めたんだ!? もしかして、今流行りの異世界転生ってやつか!? 「貴様、何者だ。ここがどこかわかっているのか!」  転生前の記憶を思い出して黙り込む俺の鼻先に、オラン・イグニスの大剣が向けられた。綺麗に磨かれた鋒に、平々凡々な俺の顔が映る。 「答えろ。さもなくば血を見ることになるぞ」  オタク(俺)の顔面を直視して、急に冷静になってきた。そもそもここが『さいまじゅ』の世界だとして、今俺がいるのはどのエリアなんだ?  クリスマス衣装のオラン・イグニスがいるってことは、もしかして 「ノガルドの森……?」  ノガルドの森とは、2019年のクリスマス限定イベントで解放された限定エリアのことだ。  クリスマス前、魔力の滞留によってノガルドエリアの森林地帯に生息するワイバーン達が邪竜へと姿を変えてしまった。    その邪竜を殲滅するために火の精霊から加護を受けた衣装、つまりクリスマス限定SSR衣装を纏ったオラン・イグニスが騎士団を率いて討伐に向かうっていうストーリーだった。
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