プロローグ

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プロローグ

「ひぃっ!! 2019年クリスマスイベガチャ限定排出率0.05%火属性火力トップ人権SSR【聖なる灯火】オラン・イグニス(未復刻)!!!!!!!!!!!!!!!!」  一呼吸で吐き出して、俺は目の前に立つクリスマス限定SSR衣装の最推しに腰を抜かしていた。  だって信じられるか?  貯め込んだ石と引くレベルの諭吉を投入しても出なかった限定衣装の最推しが、三年経った今も復刻していない限定衣装の最推しが、今、俺の、目の前にいる。  アッシュブロンドの髪は額を隠すように前髪だけ長く、その隙間から見える濃紺の瞳が俺を見下ろしている。  ああああああやばい。やばいやばいやばい。推しが、生きてる……。 「貴様」 「はわっ、シャベッタァ……」  厚い唇が開いて低い声が聞こえた。はぁっ! 最高。さすがCV高谷芳忠。この低音の中に滲み出る優しさがたまらん。  女の子みたいに口を押さえてしまうのは許してくれ。だって俺今、最推しのオラン・イグニスに話しかけられてる……ううう、もう死んでもいい。  ……あれ?  ふと、違和感を覚えた。  そういえば、なんで俺の目の前にオラン・イグニスがいるんだろう。  だって彼は、俺がドハマリしているソシャゲ『さいまじゅ』こと、『最後の魔術士』のキャラクターなのに。 「……っ!?」  その瞬間、頭が割れるように痛みだして、俺は全てを思い出した――
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