プロローグ

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プロローグ

 オイルが(したた)る音に、前方でのぼる炎。なだれ込むように倒れる大勢の人――あのバスの中のカビくさい箪笥(たんす)の中みたいにこもった匂い。  この目で(じか)に見たわけではないはずなのに、なぜだか鮮明に頭の中に焼き付いて離れない。熱くなった身体をねじらせて、私は必死に隣の席を覗きこもうとする。  と、夢の中、ここで場面はいつも朝に戻る。
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