胸の手

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 するとモトヤは、笑顔を見せながら、 「そうですよね。慣れてくれば胸の手で回したりとか‥‥」  彼は、アハハハー! と笑ってから、 「これは失礼しました‥‥」  何故か、あせった顔で会釈した。 「えっ、胸の手‥‥ですか?」  とレイがモトヤを見詰めていると、サヤカが笑いながらレイに、 「ジョークじゃない!」  そしてモトヤに向かって、 「ですよね? 奥の手のこと‥‥ですよね?」  モトヤは、中途半端な笑顔で数回うなずいた。 「私も出来たら、そんな手が欲しいですよ。なるほど‥‥奥の手ですか‥‥」  その時、モトヤの後ろから、 『私なんか、母に茶道部やってるって言ったら、一番高価なオパールのネックレスをもらったのよ。今度見せてあげるわ』  モトヤは一瞬、真顔を見せてから、 「無論ジョークです。じゃ僕はこれで」  モトヤは、また会釈すると戻って行った。  その姿を見ながらレイが、 「だけど、奥の手のことを、胸の手って言うかしら‥‥」 「アンタもしつこいわね。ただのジョークじゃない」
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