憎しみは黒く燃えて灰となる

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 会議室として利用されているだだっ広い食堂。そこにはすでに皆が集まっていた。 「じゃあ始めようか」  団長がそう声を出す。 「麻薬を密造しているグループの幹部が、繋がっている政治家と手を取り合って慈善団体をつくった。この幹部は、クリーンなイメージを世間に打ち出して後に政界へ進出しようと画策しているという噂がある」 「どうして麻薬を密造している犯罪グループが政治家と繋がれるんだ? そういう奴らを潰すのが政治家の仕事なんじゃないのか?」  俺の疑問に対して、団長はすぐに答えを出す。 「そりゃあ、金と権力があれば容易なんだろう。そういう世界だ」 「クソみてえな世界だな」  レンドウの顔が思い起こされて、頭がカッと熱くなる。 「今回の仕事は、その慈善団体が主催するパーティーに潜入し、すべてを破壊することだ。政治家も幹部も全員殺せ。正義の名の下に、悪を叩く。それが俺たちの正義の示し方だ」  団長は力強くそう言った。団長の語る正義が俺は好きだった。俺はそれに従うだけ。 「その幹部と政治家の写真がこれだ」  団長はホワイトボードに写真を二枚貼り付ける。それを見て、俺は思わず息を止めた。 「幹部の名はレンドウ。いかにも悪人面だな。こいつはずっと闇の世界で生きてきた人間だ。今更ながらにして地上へ出ようとしている。そんな奴は生きていく資格など」 「……団長、そのレンドウ、俺にやらしてくれ。俺が殺す」 「あ? おいリム、てめぇなに調子こいてんだ? そんな大事な仕事をどうしてお前みたいなクソガキに」  仲間の一人が声を荒げて俺を睨みつけている。でも、何を言われようが俺は考えを変えるつもりはなかった。 「誰にも邪魔はさせない。こいつは、俺が殺す」  レンドウ……レンドウ……レンドウ……。  ついに見つけた。ずっと探していた。深淵に入ってからもずっと。 「まあいい。わかった、リム。お前に任そう」  団長! という怒りを孕んだ声が聞こえる。 「こいつがこの中で誰よりも強いのはみんなわかってることだろ? やらせてやろう。団長命令だ。しかしなリム、レンドウには必ず厚い警備が付くはずだ。恐らく、燎火隊の奴らもレンドウを警護するだろう。俺たちもお前を援護する。やれるか?」 「愚問だよ」  俺は席から立ち上がり、食堂を出ていく。体が震えていた。恐怖からじゃない。これは怒りだ。まだ俺の中には復讐心が存在していた。奴の顔が脳裏に浮かび上がる。  俺の喉を焼いたあの炎操者はすでに探し出して殺している。残るはレンドウだけ。  待っていろ。必ず、お前を殺す。約束を果たしてやるよ。  体はまだ、震え続けている。  
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