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計画当日。
団員たちは派手に宴会場を襲撃した。銃声や叫声が聞こえ、衝撃音が止むことはなかった。
SPに連れられてレンドウが宴会場を出ていく手筈になっている。出口への導線を塞がれて彼らが導かれるのは、使用されていないこの広い会議室。机や椅子は片付けられていて、何もない空間が広がる。
「ひとまず、ここで待機しましょう」
カーテンに隠れた俺の存在に気づくことなく、SPの声が室内に響いた。
「何が起きているんだこれは! 早く私をここから連れ出せ!」
レンドウが声を荒げるのが聞こえた。意外にも、俺は冷静だった。カーテンの陰から警護員の数を確認する。全部で四人。
当然、その中には炎操者もいるはずだ。全員が同じスーツを着ているため、誰がそうなのかはわからない。
彼らがカーテンを調べ始める。
ドアから一番奥のカーテンに潜んでいた俺は、ゆっくりと姿を出す。
「遅かったな」
警護員たちが一斉にこちらへ銃を向け、レンドウを護ろうとしていた。そんな人間を護る必要なんてあるはずがないのに。
「覚えているか? 俺のことを」
しゃがれた声が室内に響く。
「誰だ! 貴様、深淵のメンバーか?」
一人の男がそう尋ねる。
「お前に用はない。俺はレンドウ、お前を殺すために今日まで生き続けてきた。ようやくだよ」
「それ以上近づくな! 一歩でも動けば撃つぞ!」
「やればいいさ。その前に死ぬけどなお前らが」
俺は右手を前に伸ばし、意識を集中させた。
「下がれ! あんたたちじゃ無理だ」
一人の眼鏡を掛けた優男がそう叫ぶ。でももう遅い。
俺の右手からは炎が生まれ、それは三体の狼へと姿を変える。赤い狼。俺の意志を理解して獲物を殺す。
「え、炎操者か!」
彼らの後ろにいたレンドウが怯えた声を出す。
銃を持ったSP三人は躊躇わず引き金を引く。しかし、それは無情にも宙を舞うだけだった。
三匹の狼たちは銃弾を避けながら彼らに襲い掛かる。首に噛み付いた狼は、警護員を焼き殺し、共に燃えて尽きていく。
一瞬で三人は姿を消した。
レンドウを護る人間はあと一人。
「お前が燎火隊のエリート炎操者か?」
「どうしてそれを?」
「そんなことどうだっていい! 殺せ! 早くそいつを殺せ!」
醜い。あまりにも醜い。レンドウは俺の記憶の中にあった通り、屑だった。
「俺はな、そいつを殺すためにここまで生き延びたんだ。邪魔はするなよ」
「……そのしゃがれた声。銀色の首輪。お前、リムか?」
「は? どうして俺の名を?」
優男は軽く笑みを浮かべた。
「そうか、そういう運命だということか」
「訳のわかんねーことを。邪魔するのならお前も、殺す」
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