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◇
ヴァイスは目の前に広がる光景を見て、唖然としていた。こんな炎操者は見たことがない。自分の血液を使って炎を作り出すなんて。
黒い狼は全部で六匹。それら全てが彼の意志を受け継いでいた。
来る。一斉に。
ヴァイスは翼を広げ、応酬する。が、黒い狼たちは先程よりも動きが素早く、突風を受けることなく身をかわしていく。
背後にいるレンドウが邪魔だった。
彼さえいなければ、まだ戦えるはず。
護衛対象者を護りながら戦うのは余計に神経を使った。
炎の羽を銃弾のように飛ばして狼を撃つ。しかし、炎の力が弱いのか、羽が刺さった狼たちは何事もなかったかのように追撃をやめない。
ついにはヴァイスの目の前まで来ると、その黒い塊たちは彼に襲い掛かるのをやめて、背後にいたレンドウに狙いを変えていく。
「うわあああ!」
リンドウが無様な声を出したのを聞くと同時に、ヴァイスは瞬時に背後へ回り込んで彼を護るようにして炎の翼で身を屈めた。
狼たちが牙を剥いてヴァイスに襲い掛かる。
鋭い牙が彼の肉を貫き、そこから灼熱の炎が体内に侵入してくる。肉が焼ける臭いがして、気が遠くなるような熱さを感じた。
ヴァイスは自らの体温を急速に上げ、狼たちを焼き尽くすほどの炎を纏った。火柱が上がり、黒い塊が消えた。
意識が飛びそうになり、体中からは血が溢れてはいたが、彼は生きていた。護衛対象者であるレンドウもしぶとく生き残っていた。
「や、やったのか? やった、やったぞ! ヴァイス、よくやった!」
ヴァイスの腕の中で縮こまっていたレンドウは、立ち上がって辺りを見渡している。
体から煙が上がり、立つことすらままならないヴァイスは、膝をつきながら彼の様子を見ていた。
すると、レンドウは倒れていたリムを見つけて近寄っていく。すでに彼は息絶えていた。リムの周りには黒い血が広がっている。
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