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「お前のせいで死ぬとこだっただろうが! クソクソくそが!」
レンドウは倒れているリムの頭を何度も踏み潰す。何の反応も示さない彼の頭が床に叩きつけられるのが見えた。
『何が正義だよ』
リムの言葉が蘇る。
レンドウは踏みつけるのをやめると、今度は死体を蹴り始めた。腹や腰、頭を何度も何度も蹴りつける。
『お前が求める正義なんてな、クソみてえなもんだよ』
目の前でそう語られているようだった。
ヴァイスはふらつく足を懸命に動かして立ち上がる。
「……正義って、なんだよ」
「あ? なんか言ったか?」
レンドウは蹴りに飽きたのか、今度は転がっていたナイフを拾い上げた。それをどうするつもりなのか。もうヴァイスにはわからなかった。本当に護るべき者が何なのか。
炎は意志だ、とはよく言ったもので。彼が貫いた意志は今はっきりとヴァイスに受け継がれていく。
体から流れ続ける赤い赤い血。
それを握りしめて、黒い炎へと変化させる。
一匹の狼。それを作り上げるのにどれだけの力が必要なのか。
「ん? お、おい、なんだそれは?」
ヴァイスが作り出した黒い狼に気づいたレンドウが、後退りしながら怯えた声を出す。
「リム。お前の意志は、私が受け継ぐ。正義が何かはわからないが、悪が何かだけはわかる」
「お、おい、待て! お前は、俺を護衛するのが仕事だろ? 何をするつもりなんだ?」
ヴァイスはゆっくりと腕を伸ばし、指を差す。
その先にいるのはレンドウ。
行け。
言葉を受け取った意志は、一直線に敵の元へと駆けていく。
「うわああああ! 来るなぁぁああああ!」
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