目覚めると悪役令嬢だった

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目覚めると悪役令嬢だった

 寂しい人生だった。    私は病弱で、学校に通っていたけれど休んでばかりで良く虐められていた。  友達は犬のぬいぐるみ、わんただけだったし。  そして、とうとう寿命を迎えた。  唯一の楽しみだった乙女ゲーム『麗しのローズ』ともお別れだ。  できることなら、このゲームの主人公アルマのように、誰からも愛される存在に生まれ変わりたい。私はそう思いながら、永遠に目覚めない眠りについたはずだった……。  *** 「あれ? 私、生きてる……? って、ここどこ? 病院じゃないし……?」  私は目を覚まして辺りを見回した。  私の居る部屋は、絵画で見たような中世ヨーロッパ風の豪華な作りだった。アンティーク調の戸棚や大きな花を生けた花瓶が飾ってある。私の寝ているベッドにも天蓋がついている。ふかふかの布団に埋もれるように寝ていた私は、上半身を起こしてベットに腰かけた。  この部屋、なんだか初めてのはずなのに見覚えがある……。そして、スノーという名前も聞いたことがあることに私は気付いた。そして思い当たった。そうだ、ここは『麗しのローズ』の世界だ! 私が気付いたその時、ドアをノックする音が聞こえた。 「スノー様、お目覚めですか!?」 「えっと……?」  私は部屋に誰も居ないことを確認する。どうやら私のことをスノーと呼んでいるらしい。 「失礼致します」  メイドが部屋に入ってきた。 「スノー様、体調はいかがですか? 昨日は眠り続けていらっしゃいましたが、具合の悪いところはございませんか?」  私はメイドに答えた。 「大丈夫みたいです。頭も痛くないし、体も重くはありません」 「良かったですわ。スノー様」  メイドは、ホッとため息をついた。  どうやら良い人のようだった。私はメイドに声をかけた。 「ありがとう、心配をかけたのね、私」  そう言ってメイドに微笑むと、メイドは慌てて言った。 「やはり、お医者様を呼んだ方が良いかも知れません。スノー様がありがとうとおっしゃるなんて、どこかお悪いに決まっていますわ!」  私は失礼なメイドだな、と思った。 「大丈夫だと言っているでしょう!?」  私が少し苛立って、強く言うとメイドは安心したように表情が柔らかくなった。 「よかったですわ。いつものスノー様にお変わりないようですわね」  私はゲームのスノーを思い出して、嫌な汗をかいた。  確かスノーはゲームの最後に、その性格の悪さから断罪され、屋敷を追い出されて孤独な旅にでるのだ。  私は心に決めた。  これから態度を改め、王子と幸せなハッピーエンドを迎えるのだと。 「スノー様、そろそろ学校へ向かう時間ですが、今日はいかが致しましょう?」 「……学校に行きます」  私は言った。  また、ドアがノックされた。執事が私を呼びに来たのだ。 「ご学友のアルマ様がいらっしゃいました」 「はい、今行きます」  私は身だしなみを整え、アルマの元に向かった。  玄関にはアルマの乗っている馬車が止まっていた。 「スノー様、ご気分はいかがですか? 体調は大丈夫ですか?」  優しい笑顔を浮かべて、心配そうに声をかけてきたアルマに私は言った。 「大丈夫です。ご心配おかけしました、アルマ様。それでは学校に参りましょう」  私はアルマの馬車に乗り、学校に向かった。
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