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こんなことをしても、愛里は、帰ってこない。あの、笑顔を、二度と、見られないのだ。
遺影は、保育園のみんなで水族館に行ったときの写真だった。我々は毎年夏に、短い休みを取り、実家に帰省する程度で、以外はなかなか外で一緒の思い出を作ってやれない自分が歯がゆかった。土曜も仕事で娘を保育園に預けることさえあった。土曜保育をする人間は少数で、百人以上の園児がいるうちの園で、全学年で五名程度。勿論年長のはな組の子は他におらず、……だから、小さな子と散歩をする機会が多かった。車の多い通りで、お姉さん役を担った。車や自転車には誰よりも敏感で、時には先生よりも先に注意することもあった。――お姉さん、だった。なのに。なのに。なのに。なのに……。
あいつが。あの、――にやついた糞爺が。
おなじ目に遭わせてやらないと気が済まない。――そうだ。あいつに、同じ苦しみを味わわせてやればいいんだ――娘がいる、なら、孫もいるのかもしれない。
そこから、おれの仕事は始まった。週刊誌やネット、新聞などで情報収集をし、浅田の環境を、探った。
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