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生きる目的が出来たのが皮肉だった。愛里を失ったいま、生きる意味などなにもないのに。――いや。
きみの命を奪った輩に復讐をするのが目的だ。それが、父さんの生きる意味。
お父さん馬鹿ね、と、きみは笑うだろうか。なじるだろうか。いつものような、きみの、純粋な、正義感を満載で。――きみは、母さんに似て、美しい子で……ルールには時々厳しすぎるくらいだった。お父さん、塩分摂りすぎだよ。健康診断、また、引っ掛かっちゃうよ。なんでお父さんの隠してる健康診断の結果なんか見てるんだよ。きみは、有能すぎる探偵、だった。
母さんを失ったときにわたしは絶望した。――けど、世の中には、これ以上の苦しみがあったんだね。知らなかったよ。――いや、きみはもっと苦しんだ。ごめんね。父さんが、せめて……一緒にいてやれば。死にゆくきみの手をあたためて、きみのことが大切なんだ、生きて欲しいと――伝えてやれば……伝えてやれば。
ひとは、死んだ後もしばらくは聴覚が働くと聞く。ならば。わたしは、きみに、愛を――伝えただろう。産まれてきてくれてありがとう愛里。きみはぼくの宝物なんだよ。愛里。
愛里。愛里……。
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