◆02. この怒りはどこに

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 わたしの生きる目的は決まった。刑期を終えて出所した浅田を殺す。そのためには、資金と情報が必要だ。よってわたしは、浅田の会見の翌日には仕事に戻った。周囲からは心配はされたが平然と仕事をした。  帰宅しても誰もいない。子どもの送迎もない。子どもの……栄養面を考えた食生活を考える必要もない。子どもを……愛里の、あの、長く伸びかけた髪を……洗ってやることも……。からだを拭いてやることも……。 『愛里。もっと長い髪がいいもん。腰まで伸ばすもん』――愛里は。いつも、おれと一緒の美容室で大人しく髪を切られ(三歳の頃から)、いつも、理想よりも短く切られることに腹を立てていた。ただ、最近は、前髪に対しては長めにカットして貰えることに満足しているようで、えへへ、可愛いでしょう、なんて言っていた……可愛いに決まってるだろ、うりうり、と、頭にやさしくヘッドロックをしてやった……あの、宝物のようなひと時は二度と訪れない。
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