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◆01. 悲しみは突然に
七月三十日午前八時二十三分。事故があったその瞬間、わたしは、既に出社しており、仕事のメールをチェックしているところだった。
わたしの勤める会社はセキュリティが厳しく、職場に携帯電話を持ち込めない。持ち物はすべて、ロッカーに仕舞う必要がある。
就業時間は九時からではあるが、それでは仕事が終わらない。保育園と幼稚園が併設される認可こども園に愛娘を預けるわたしは、必ず定時で仕事をあがるようにしていた。そのための、早出社だ。本当なら残業代をつければと言われてはいるが……、皆、一時間程度残業する中をひとり先に帰るのだ。このくらいの努力は必要だろう。
職場に、もし、テレビがついていたら。その凶事をもっと早く知ることが出来ただろうに。つくづく、悔やまれる。
九時を迎えた時に、いつも通りのメンバーが揃い、いつも通りの仕事をする……はず、だった。
九時十分を回ったときに。職場に電話があった。――実はわたしは、客先に常駐しているマネージャーであり、わたしの携帯の次には、勤め先である本社に連絡が行き、そこから人事部がわたしの常駐先を調べ、連絡が入った、というかたちだ。先ず。
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