◆01. 悲しみは突然に

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「……人事部の石井です。……里崎(さとざき)正吾(しょうご)さんでお間違い……ないですか」  人事部の彼女の声はふるえていた。嫌な予感がした。「はい。……そうですが」 「今すぐ……、携帯を……見てください……ッ!!」彼女の声は涙混じりだった。何故だ。背筋に悪寒が走る。本能で。本能的に、危険を察知した。――なにか、あったのだ……。「け、警察のかたから連絡が入っているはずです……、ッ……ッ、お嬢さんが。お、お嬢さんが……ッ」  ところかまわずわたしは叫んだ。「娘に。――娘に、なにが、あったのです……ッ!?!?」  * * *  病院に着いたときには娘は既に冷たくなっていた。信じたく……なかった。信じられなかった。わたしの、大切な、愛里……我が娘。 「あ、あ、ああぁ……!!」喉の奥から勝手に叫びが走り出た。いったい、……なにが。どうして、こんなことに。  死に顔が安らかだったのがせめてもの救いだった。娘との対面を果たし、そして、わたしは、警察から事情を説明された。
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