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「……七十七歳の老人が、ひき逃げ……、ですかッ!?!?」激高のあまり、眩暈がする。いや、わたしのするべきことはそれではないのだ。娘が何故、こんなむごい目に遭わなければならなかったのか、それを、知らなければならない。「信じられない……それで、そのご老人や……それに、娘と一緒にいた園児や……保育士のかたはッッ!?!?」
娘はいつも八時前に近くの公園まで園のバスを待つ。いままでは、時差出勤をしてわたしが一緒にいたが、そのうち、年中に入ったあたりから、「お父さんわたしもう大人なんだよ」と言い張り、バスが来る場所でおれなしで待てるようになった。成長を、感じたものの……。もし、わたしが、その場所にいたら……。娘と一緒に、死ねただろうか。娘と……一緒に……。
浅田勢吉は、自分の娘が交通事故に遭ったと聞き、病院へと車を走らせた。といっても、娘さんは中年の女性で、捻挫程度。さほど、車を飛ばす必要などなかった。
そして。浅田はブレーキとアクセルを踏み間違え、幼稚園・保育園のバスの待機列に突っ込み――わたしの娘を殺し、残り七名に怪我を負わせ、逃げた。
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