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◆07. これをするしか、いまは【里崎正吾視点】
物心つかぬ年頃に、自分が貰い子だということを知った。通っている幼稚園の同級生に言われたのだ。
『しょうごくんのパパとママって本当の親やないんげね』
帰って速攻親に尋ねた。父は、……涙ながらに認めた。そやけど愛してる。当たり前だが親としての最善の言葉を投げかけてくれた。
以降も。あそこは閉鎖的な田舎だから、異分子をとことん嫌う。養子だということが理由で中学の頃はひどいいじめにあった。まったく、思い出したくもない。
――そんなときに、『彼女』に出会った。
「……石狩くんも大変やね。あんなだらな連中のことなんか放っておけばいいげわ。血が繋がっとらんのがなんやて言うのアホらし」
屋上で堂々と煙草をスパスパ吸う彼女に、一瞬で惚れた。校則で化粧は禁止されているというのに、赤い、口紅なんか塗って。
「……吸う?」
聞かれたがおれは拒否した。正直に、憧れはあったが……あの、血の繋がりもない子を我が子同然に育ててくれた両親を、悲しませる気がしたのだ。
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