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母さんが、おまえを産んだときに亡くなったことで、おまえは、『パパからお母さんを奪っちゃってごめんね』と謝る、やさしい子だった。いつもわたしは答えていたね。母さんが命がけで産んだ宝物がおまえなんだよ。おまえも、母さんも、わたしの大切な家族だ。――寂しい時は、母さんに語り掛けると言っていたね。悩んだとき。辛いとき。母さんが、親身になって相談に乗ってくれると。
病院に運ばれる直前まで愛里の心臓は動いていたそうだ。せめて……そのときだけでも、傍にいてやれたら……。
愛していると……伝えられていたら……。
きみを、ひとりで旅立たせずに、済んだはずなのに。
小さいお骨を拾う儀式がわけも分からぬうちに終わり。喪主としてなにを喋っていたのかさえ覚えていない。驚いたことに。ひき逃げの犯人である浅田が――記者会見をするという。
警察から軽く事情を聞いた程度で、事件のことはまったく分からない。むしろ、マスコミが報道する真実を通して真実を知る現状だ。被害者家族なのに――愛里を奪われた被害者であるのに。警察は、犯人について、まったく教えてくれない。会見のことも勿論ニュースで知った。
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