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「守られた約束」
あの日の約束から2回目の春がきて、僕は約束の場所へ訪れた。
君が来ないとわかっていても、心のどこかでずっと君を探している。
君と約束を交わした場所は、今も変わらず綺麗に桜が咲いていた。
永遠と思えたあの時間はもう戻らないのだと、今更に感じている。
でもなぜか、不思議と君に会える気がした。
*
陽が落ちてきた。
君を待っている間、また、君との過ごした日々を辿っていた。
桜を見ている君に、桜と雨のなかで佇む君に、綺麗に笑うその笑顔を。「また、会おう」と言った時の君の笑顔が忘れられない。強く、強く、心に焼きついている。
君に想いを馳せている心が歯がゆい。こんなことなら、あの日に想いを伝えていれば良かった。
もう帰ろうと、来た道を戻り歩き出そうとした時、雨が降りだした。
そう言えば、今日の予報は雨だった。そして今、花びらと一緒に雨が降っている。
あの日と同じ、桜の雨だ。
僕は傘を差さずに、佇んだ。雨に打たれ、桜の花びらが散っている。
もうここに来るのは最後にしようと、目を閉じた。
桜と雨と匂いと君。忘れないように、大事な思い出を心の奥に終おう。
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