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 侵入口は二階に決めた。いくつかある二階の窓から忍び込み、部屋の中を物色する。忍び込んでしまえば、どの部屋に金目のものが置いてあるかは、鼻が教えてくれる。  正面玄関の左手にウッドデッキが設えられていた。その柱を頼りに屋根に上がる事が出来た。誰もいない筈だが、もしもの事を考えて窓枠の下に身を潜め、中の雰囲気を伺った。不気味な程に無防備だった。窓に鍵は掛かっていたが、セキュリティーシステムは備えられていない。それが逆に胸をざわつかせた。  進むべきか戻るべきか逡巡した。これまでに経験した事が無い何かが、胸元に痞えている気がした。やめておけ、と言う甚吉の幻聴が聞える。やめておくべきだと思った。だけど、何故かそれをすんなりと受け入れられない。  結局、覚悟を決めて忍び込む事にした。選んだ部屋は表玄関の上の部屋だ。玄関のライトが庭を照らすように向けられているので、ライトの上は逆光になる。それ故、目立たないのだ。  窓に手を掛け、特殊な工具を使って慎重に鍵を開けた。窓を切り抜いてしまったほうが手っ取り早いのだが、それでは忍び込みが露見してしまう。痕跡は極力残すべきではない。  何の変哲も無い窓だった為、作業に手間取る事はなかった。  家の中に侵入し、靴底にカバーを掛けて、廊下を慎重に歩く。部屋の数はざっと見積もっただけで6部屋。その中に外壁と接していないと思われる一室があった。窓の無い部屋と言うのは納戸として使われることが多い。しかし、ただの納戸ならば、ドアノブやドア周りの雰囲気で何となく分かるものなのだが、この部屋は明らかに違う。  お宝の在り処はここだ、ここに違いない。直感が働いた。直感だけではない、状況的な裏付けもあった。他の部屋には鍵穴が無いのに、この部屋だけ鍵穴がついており、しかも鍵が掛かっていたのだ。  この家には家政婦が出入りしている。もしかしたら家政婦を警戒しているのかもしれない。少ない情報から点を見つけ出し、その点を繋いで線にしていく。この部屋に入れば、お宝にありつける。そう確信した。
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