女神と青年

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 あれから一週間、今日も女神は退屈していました。青年との少なすぎる会話ばかり、思い出しては物憂げになってしまいます。  気を紛らす方法も少ないので、今日は斧の持ち手に無駄に凝った装飾を施しました。次はどんな加工をしようと考えていると、大きな振動と音が頭上で轟きました。  もしかしてと思い、引っ張られるように顔をあげます。近付いてきたのは、あの鉄の斧でした。  一瞬本気で夢かと思いましたが、夢だとしても食いつかずにはいられません。女神はまたも、落ちきる前に準備を整え、地上へ飛び上がりました。  喜ばしいことに、立っていたのはあの青年でした。張り切って決め台詞を放ちます。  しかし今日も、気持ちよいくらいばっさりと断られました。落ち込みましたが、覚悟はしていたのでこの間より平気です。  鉄の斧を返しながら、一応もう一推ししてみます。 「本当にいらんの?」 「はい」 「本当は欲しかったからもう一回落としたとか違う? そういうの一パーセントもない?」 「落としたのは手が乾燥していて……」 「そうなんや、大変やね」  青年の両手には、あかぎれや擦り傷が目立ちました。赤々しさが痛々しいです。金や銀の斧を売れば、薬をがっぽり買えるのに……と考えましたが、言った上で拒否されたら悲しいのでやめました。  用件が済んだからか、青年はあっさり背を向けようとします。しかし女神は、せっかく訪れたチャンスを手放したくありませんでした。 「なぁ、今日も全然時間ないん?」 「……す、少しならあります」  だから思い出が作れると分かったときは、両手でガッツポーズをしていました。  女神は水面に腰を下ろし、青年を質問攻めします。青年は時々困った様子を見せながらも、ニコニコと答えてくれました。    青年は、森の近くの村に、幼い妹と二人で住んでいるそうです。両親が早くに死んでしまい、一人で妹の面倒を見ていると言います。妹はとても可愛いけれど、一人で頑張るのはよく辛くなるのだと青年は話してくれました。  事情を聞いて、女神は口にせずにいられませんでした。 「なぁ、金と銀の斧を売ったら、お金になると思うんやけど……」 「……大丈夫です。生活はできているので」  ちょっぴり迷った末、やっぱり断られてしまいましたが。  お気遣いありがとうございます――そう付け加えた青年は、笑顔を輝かせます。こんなに素敵な青年へ、ゲリラ豪雨のように幸福が降り注ぎますように。そう願わずにはいられませんでした。あわよくば、もう一度斧を落としてくれますように、とも。
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