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16歳になった今でも、あの不思議な夢のことはよく憶えてる。
「あっつ!温暖化に殺される!」
友人が机に項垂る。今朝も昨日のように「今年一番の暑さ」だと言ってたっけ。
確かに暑いけど毎年同じにも思える。
「こんな暑くても日華は夏が好きなの?」
「冬はあまり得意じゃないなあ」
「冬のほうがいいじゃん~。クリスマスもあるし」
人それぞれだと思うけどなあ。
「その鉢植え持って帰るの?花壇のだよね?」
「この子ボールが当たっちゃったのか元気ないの。だから家に持って帰って治療してあげようと思って」
「もー。お花のこと人間みたいに言うー」
だけどこの子は種だったのに、水をあげると育つし、太陽の光を浴びようとしてる。生きてる。
生死を彷徨ったことがあるからか、はたまたあんな夢を見たからか、小学生の頃から園芸部や生き物係をしてしまう。
鉢植えを大切に抱えながら友人たちと歩く帰り道。
家では家族が待っていて、おいしいごはんが出て、温かいお風呂に入れて、ぐっすりベッドで眠る。
楽しくて明かるい日々。
だけどどうしてか…いつも、何色かが足りないと思いながら朝を迎える。
サンが知ったら贅沢だって言うかな。
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