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不信
ジャックが頑なにアイラの言葉を信じられない理由は、この件でここへ呼ばれたのが今回で三度目だったからだ。
一度目の時はジャック意外にも警察の人間が大勢来ていた。
長い時間をかけ捜索や聴き取り調査が行われていたが、なんの手掛かりも掴めず結局は生徒の見間違えで『事件は起こっていなかった』そう結論付けられた。
二度目も全く同じ様な状況になり、三度目のこの日、遂にジャック一人が出動する事となったのである。
「確かにッ警察からしたらイタズラに感じるかもしれません……ですがアイラは決して嘘をつくような生徒ではありませんッ!!」
グレースはアイラの通報がイタズラじゃないと信じ、それを証明しようと必死になっていた。
「グレース先生……」
「…………………………」
自分の言葉を信じてくれる先生にアイラは胸が熱くなる一方で、ジャックは困ったように頭を掻いていた。
「お願いですジャック刑事!もう一度だけ調査してもらえませか?!」
グレースが再度熱望すると……
「フゥ――……三階を見たら帰ります」
ジャックは渋々校舎の中へと入って行った。
グレースとアイラは顔を見合せ、少し安堵した笑顔を見せると二人もジャックの後へと続いた。
そんな三人のやり取りを、少し離れた場所からひっそりと見聞きしている者がいるとは気付かずに……
ジャックとグレース、そしてアイラは女が落ちたとされる三階の踊場に到着した。
踊場にある壁は全面窓ガラスになっており、そこからは先程三人がいたキャンパスが良く見えるようになっていた。
ジャックは割れた窓から下を覗き込む。
「にしてもこの大学は風通しが最高に良いな!いつ来ても窓ガラスが全部割れてる」
「今回も突風が吹いて割られたのよ!今日のもかなり強かった……お陰で午後からの授業は中止だし明日は休校……」
アイラは突風でキャンパスに散らかったゴミを窓から指差した。
ジャックが差された先を見る。
「てっきり暑さ対策かと思ったよ」
勿論本気でそうとは思っていないジャックは(何か手掛かりがないか)と割れた窓から身を乗り出し上下左右を覗き込んだ。
「でも、落ちた目撃のある日にだけ突風が起こるなんて……そんな偶然……」
グレースが自問自答のように呟く。
「俺に言わせりゃ、そういう気象条件の時こそ人間の見間違いが多いと思いますけどね」
ジャックは「やはり何も無い」と判断すると、窓から乗り出した身体を戻した。
「アレは絶対に見間違えなんかじゃない!確かに落ちるところを見たの!その人かなり若かった……多分ここの学生よ!」
アイラは抗議の声を上げながら三階の踊場を見渡そうと、四階へ続く階段に足を掛けた、瞬間……
「ッ!?」
真っ赤に濡れた手がアイラの足首をガッと掴み勢い良く下へと引っ張った。
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