制止

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制止

「おいッなんだッ!?」 「彼女じゃないよッ!!」 青年は二階から駆け上がって来くると、制止の声と共にジャックの小瓶を持った方の腕にしがみ着いた。 「放せッ!」 「彼女じゃないんだッ!!」 青年の正体はアルフィーだった。 アルフィーはジャックの小瓶を奪おうと必死に手を伸ばし、ジャックは奪われまいと必死に小瓶を高く掲げる。 ジャックとアルフィーが揉み合いを続けていると――ゴオオッという鈍い音と共に爆風が吹き荒れた。 「ッヅ!!」 「ッヴ!?」 その爆風に二人は一瞬で高く飛ばされると、床へと叩き付けられる。 「ゥヴッ」 衝撃でアルフィーの掛けていた眼鏡はヒビ割れ、口内が切れたのか――ポタポタと血が床に零れていた。 自分の血だと気が付いたアルフィーは震える指でそっと血を拭う。 途端、うつ伏せに倒れたままのアルフィーが高速で床の上を滑って行った。 「うわああああああッ!?」 まるで誰かに足を掴まれ引きづられて行くように。 「クソッ!!」 ジャックは引きづられて行くアルフィー目掛け飛び込むと、その手をしっかり掴んだ。 が、止まる事なくジャックもそのままアルフィーと共に引きづられて行く。 二人が引きづられて行くその先には割れた窓…… 「あああああッ!!」 「ッ!!」 アルフィーとジャックは割れた窓から完全に外へ飛び出すと、その体は宙に浮いていた。 そのまま地面目掛け落下する、そう思われたが…… 「ッ……離すなよッ! 青年ッ!!」 落ちる寸でのところでジャックの空いている右手が窓の冊子を掴んでいた。 ジャックの右手一本を支えに宙ぶらりん状態の二人。 「は……離さないでッ!! 絶対ッ!!」 アルフィーも必死にジャックの左手にしがみつく。 「――――ッッ!!」 ジャックは呻きを上げながら窓の冊子を掴む右手に力を込める。 懸垂の要領で身体を徐々に持ち上げ冊子に近付けていった。 「頑張ってッ! 神父様ッ!!」 「ッッ!!」 左手にぶら下がるアルフィーから声援が飛ぶ中、ジャックはその左手にも力を込めた。 アルフィーの体が少し上がる。 「俺はッ……神父じゃッ……ないッ!!」 『神父様』と言われた事を否定しつつ、ゆっくりとだが着実にアルフィーの体を窓の冊子に近づけてゆく。 「俺はッ…………!刑事だあッ!!」 ジャックは力を振り絞り一気にアルフィーの上半身を窓の冊子まで引き上げた。 「……やった!上がれたッ!!」 アルフィーは歓喜の声と共に室内へと戻る。 戻るなり直ぐ窓の下へと手を伸ばし、まだ冊子にぶら下がるジャックの腕を掴んだ。 アルフィーは渾身の力で引っ張り上げようとしたが、体が細く握力の乏しいアルフィーにジャックを引き上げるのは困難であった。 「大丈夫だ青年!一人でッ……上がれる!」 「うん……ごめんッ」 役に立てなかった事に落ち込むアルフィーにジャックは微笑しながらも、力を込め直し上を見上げた。 「ッ!?」 ジャックはアルフィーの背後を目にして驚愕する。 「え……な……なにッ!?」 驚愕するジャックを見たアルフィーは、その視線が自分の後ろに向けられたものだと気が付いた。
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