23人が本棚に入れています
本棚に追加
二体
アルフィーは不安と恐怖に襲われつつ恐る恐る後ろを振り返ろうとしたが……
『キャハハハハハハッ!!』
「グッ!?」
振り返る事すら許されなかったアルフィーは背後から首を絞められていた。
首を絞めている者は先程とは違う女。
ボサボサになった黒髪を顔に垂らし、不気味に裂けた口を吊り上げている。
口からはボタボタと大量に血が溢れ落ちていた。
女が締め上げる力を強めると、アルフィーの足が地面から浮いた。
「だッ……す……ッ!」
「青年ッッ!?」
アルフィーが助けを求める中、ジャックは未だ冊子にぶら下がったままの状態。
それでも何とか左手でズボンのポケットから新しい聖水の瓶を取り出した。
ジャックは口で瓶の蓋を開け、残りの聖水を瓶ごと黒髪の女に投げつけた。
『ギギオオオアアアッ!?』
「げッほ!ごほごほッ!おえッッ……」
アルフィーは締め上げる手から解放されると床に落ちた。
咳き込みながらも漸く酸素が戻ってくるのを感じる。
一方で聖水が掛かった黒髪の女は苦しみの叫びを上げると……
『この落ちぶれ神父擬きがああッ!!』
「!?」
裂けた口が異様に大きく開かれた。
女はジャック目掛け体ごと突っ込んで来ると、同時にそれは爆風へと変わった。
「――ッッ!!」
爆風が一気にジャックの体を通り抜けていく。
衝撃でジャックは掴んでいた冊子を離してしまい、あっという間に三階から落下していった。
「神父様――ッ!?」
アルフィーは窓から上半身を乗り出し、ジャックが落下していった先を見詰める。
真下には大きな樹がありその樹が大きく揺れているのが見えた。
しかしジャックの姿は見つけられない。
アルフィーは慌てて三階から階段を駆け降りて行く。
途中、一階の保健室で手当てを終えたばかりのアイラとそれに付き添っていたグレースに出会した。
「アルフィー?慌ててどうしたの?」
グレースが呼び止める。
「神父様が落ちたんだッ!!」
「神父様ッ!?」
アルフィーの言葉にグレースは驚愕する。
「神父様って……落ちたッ!?」
一瞬困惑したアイラも『落ちた』と言う言葉に驚く。
アルフィーは叫びながら走り去っていった。
二人は顔を見合せると、戸惑いながらもアルフィーの後を急いで追い始める。
キャンパスに着くと、早速アルフィーとアイラ、グレースによるジャック(神父)の捜索が始まった。
「神父様――ッ!!」
アルフィーはジャックが落ちたかもしれない樹を見上げながら叫びを上げる。
それを見たグレースもアルフィーにつられる様に叫んだ。
「神父様――ッ! 大丈夫ですか――ッ!?」
グレースは叫んでみてふと我に返る。
「待って、神父様が来てるの!?しかも『落ちた』って!?」
神父が来ていたとは知らなかったグレースはアルフィーに尋ねた。
最初のコメントを投稿しよう!