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忘れ物
「って事は……私が見たのってッ!」
神父という言葉を聞いたアイラは、自分が何度も見た『落ちる人』は霊現象だったのかと思い始めた。
そんな中、叫びを向けていた樹が激しく揺れ始める。
「!?」
「!?」
「!?」
ドサッと言う鈍い音と共に何かが樹の上から降ってきた。
アルフィー達三人は得体の知れない何かに緊張が走る……が、
「は―――――死ぬかと思ったッ!!」
降ってきたのは勿論ジャックだった。
「神父様!!良かった生きてた! てっきり悪魔に殺られちゃったか、落ちて死んじゃったのかとッ!!」
アルフィーは無事だったジャックの姿に安堵の笑顔を見せた。
三階の窓から落下したジャックだったが、運良く樹の上に落ちた為に助かっていたのだ。
「なんだッ……ジャック刑事ッ!」
グレースは予想外な人物の予想外な登場方法に驚きの声を上げた。
「神父じゃなくて刑事じゃないこの人」
アイラがジャックを見据えながら素っ気なく言うと、ジャックはズボンに付いた汚れをパンパンと叩いた。
「当たり前だろ……誰だ?神父なんて言った奴は?」
惚けた表情でジャックが問うと、グレースとアイラは一斉にアルフィーを見た。
「だッ……て!?さっきッ!!」
「結局今日の調査でも嬢ちゃんの言う被害者は見つからなかった……て事で落ちた女ってのは嬢ちゃんの見間違えだ」
アルフィーの言葉を遮りジャックは調査の結果をグレースとアイラに伝えた。
「そんなッ!もっとちゃんと調べてよ!!確かに私ッ!!」
「無茶言うな! 見ろ俺のこのボロボロな姿を!!これ以上なにを調べろってんだ!ん!?」
ジャックは無情にも捜索の打ち切りを告げた。
そんな状況にアイラは「ハアッ!」と苛立ちのため息を吐く。
直後ジャックは……
「しまった! 上着を忘れた!」
自分の上着が無い事に気が付く。
「三階に忘れたみたいだ!ちょっと取って来る!」
上着を取りに再び三階を目指し校舎に向かい歩き出した。
そして何故かアルフィーも、
「僕も忘れ物!そのッ……サンドイッチのゴミ忘れた!」
ジャックの後を追うためよく分からない嘘をついた。言うなり急いで追い駆ける。
アイラは自分の言葉を信じてもらえない上に、話しの途中で行ってしまったジャックに怒りが収まらなかった。
遠ざかって行く二人の背中に向かい……
「卑怯物!へっぽこ刑事――ッ!!」
と罵倒の叫びをぶつけた。
ジャックに聞こえたのか、いないのか、 二人は何事も無かった様に校舎の中へと消えていった。
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