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「はい」と答える代わりに、襖を二回、ぱたんぱたんと開けて閉める音を立てた。先生の呼ぶ声に対して、返事は未だにできていない。なんとなく、引きこもった娘のような気持ちになって嫌だった。
私はここを実家のような場所にはしたくなかった。逃げ帰るような殻だけは作りたくない。ここはあくまでも始まりの場所なのだ。
「お餅、焼きますから。気が向いたら食べに来てくださいね」
ぱたんぱたん。乾いた音が作る少しの風に舞う埃が、午前の光に照らされて綺麗だった。
お餅、と聞いて、急にお腹が空いてくる。きゅるきゅるとお腹が鳴る音が止むのを待って、下へと降りて行った。
階段を降りると普段はもわっとした木の匂いがする廊下に、つんとする匂いが漂っていた。お餅の匂いではない。端々に甘いような匂いも感じるが、その正体はわからなかった。
奥からは子どもたちの声と、ばん、ばりりりり、と、物騒な物音が響いていた。今日は土曜日のはずだが。
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