43人が本棚に入れています
本棚に追加
すっかりお餅を片付けた後、待っていたのは障子の張り替え作業だった。あの不思議な匂いは障子糊の匂いだったらしい。
障子戸のまっすぐな枠に沿って、糊を丁寧に塗り付ける。多くてもダメだし、少なくても上手くいかない。
障子紙は感触の良いごわつきで、手に吸い付くような触り心地のある紙だった。会社では普通紙しか触っていなかったせいで、不思議な触感に思える。
糊を塗った木枠に沿って紙をぴんと伸ばし、余った端を半分に折って、かみそりの刃でじゃくじゃくと切る。丸めて保存してある紙は癖がついていて、くるくると元に戻りたがった。
「すみれさん、初めてにしては上手ですね」
「……そうでしょうか」
上手い状態がわからないから、私は褒められても嬉しくなかった。
「すみれさん、ワンピース、素敵ですね」
先生はまじまじと私を見つめていた。なんだか恥ずかしくなってしまい、きゅっと膝を抱えて縮こまってしまう。
「ああ、すみません。セクハラ、ですかね……」
先生は急にしゅんとしてしまった。耳が垂れた犬のようで、なんだか可愛らしく思えた。
最初のコメントを投稿しよう!