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解くような荷物も無いまま、畳に寝転がって過ごしていると、階下から「すみれさーん」と呼ぶ先生の声がした。
気づけば部屋は真っ暗で、今まで自分が何をしていたのかも覚えていない。開けっ放しだった窓を閉めて、階段を下りる。返事はしなかった。
「起こしちゃいましたか」
そう尋ねる先生に、いいえ、と短く返す。嫌な感じになったかもしれない。
しかし、先生は気に留めていない様子で、
「お花見、どうですか。引っ越し祝いに」
と、屈託のない笑顔で縁側の方を指さしていた。
私は、首肯だけして先生の背中についていく。縁側には盆に載せられた天ぷらがこんもりと用意されていた。
「すみれさんは、お酒は苦手ですか」
先生は日本酒を片手にそう尋ねる。
「いいえ、好きですよ」
よかった、という先生と並んで縁側に座る。
縁側から見る桜は今まで見てきたものとは違い、悠然とたくましく見えた。
「あ、桜」
先生から受け取ったおちょこの中には、桜の花びらが浮いていた。
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