エゴサ禁止なお約束

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 慕っていたマネージャーの仲田(なかた)が、突然いなくなってしまった。  失踪って言うんだろうか。蒸発っていうんだろうか。不自然に突然。  売れるまで見守ってくれるって、言ってたのに。  この業界、身近な人にそんなことがあると、すぐに情報が漏れてネット上でああでもないこうでもないと議論が巻き起こる。  それを憂いたのか危惧したのか、新しくマネージャーに就いた楢原(ならはら)という男は、私にこう言った。 「――約束してください。絶対にエゴサーチなんてしては駄目ですよ」  私は頷いた。  けれど難しいでしょ。人気が資本のアイドルで、SNSで情報発信だってしているこの私・笹葉(ささば)サラサが、自分の評価を確認しないなんて。  この時代、私を作るのは私じゃないんだ。  私を見た人が作ったイメージが、綴った言葉が、私になり私となる。  ううん。きっとみんなそう。  人の言葉を見て自分を顧みて、自分が自分になり自分となる。  なんていうか、疲れる時代。つまんない時代。  でもそこに生きているのが私。私を見てくれる人達も。  だから気にしないなんて、到底無理なんだ。  でも楢原の言うことも正しいし、切実だった。  だから私はしばらく、発信以外せず客観視にアイマスクをした。  約束を守った。  しかしある日ついに、我慢の限界が来てエゴサを勝手に解禁した。  そこで知ったんだ。知っちゃったんだ。  ……楢原のやつ、私のこと大嫌いじゃん。  ……仲田のやつ、ちゃんと生きてるじゃん。  そして、私を守ってくれてるじゃん。  結果的に見れば、そうだ。  やっぱりエゴサなんて、するもんじゃなかった。
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