第一章 チャイラ・トアン

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第一章 チャイラ・トアン

 孤島フィロスは、リラ紀7123年を迎えた。平和を愛するレイノ女王の治世は既に三十年近くに及び、王族もゆかりの貴族も戦いをよしとする者はいなかった。そのため国民は皆、平穏な日々を送ることができている。島の周囲には形ばかりの城壁が築かれていたが、そこを破って攻めてくる国は一切なかった。城壁の外の海は、国民にとって格好の観光地となっていた。  フィロスは正確な人口調査をしたことがなかったが、恐らく五百万人ほどだろうと噂されている。過去は多くの国と交流してきたが、現在は他の大陸との行き来は北の港からやって来る観光客だけになり、フィロス国内だけで自給自足の生活ができる豊かな土地を持っていた。
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