第一章 チャイラ・トアン

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 三十人ほどのクラスで、全員がチャイラを敵に回しているわけではなかった。ほどほどに仲良く接してくれる女の子も存在している。その特徴はわかりやすい。彼女らは皆、極端に勉強ができる。そして目立ったグループに入らない。いや、勉強ができる子たちでぼうとした一つのグループのようなものを形作っているように感じられた。さらに彼女たちは、なぜか皆が髪を長い三つ編みにして一つにまとめている。概ね大人しく物静かだ。クラスの席替えでそのような子の隣に当たると、チャイラは心底ほっとした。だが成績のレベルが違いすぎて、話題があまり合わなかった。 「どうやってテスト勉強してるの?」  いつも百点を決める隣の女子生徒に向かって、授業中に質問する。チャイラには理解のできない答えが返ってきた。 「教科書を丸暗記するだけだよ。簡単」  その後の話題が続かず、チャイラはしょんぼりと短めの羽根ペンをいじった。子ども用の羽根ペンを手の上でクルリと回す技すらも、チャイラにはできなかった。あれは練習が必要なのだそうだ。ただの子どもの遊びですら、チャイラにはハードルの高いものだった。チャイラは文字通り、落ちこぼれだった。  この世のすべては私を拒否しているわけではない。それでも世界は私を嫌っている。
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